夫婦の危機4
お似合いな2人
マルは右手にフライパンを持って、自分でも惚れ惚れするほどの鮮やかな手捌きで野菜を炒めながら、電話越しのM美の話を、かれこれもう3時間は聞いていた。
彼女がなにをそんなに話すことがあるのかというと、旦那と別れたいという話だ。
おしとやかな彼女に、優しそうな旦那、私もお呼ばれしていった結婚式の壇上の二人は、悔しいほどにお似合いだった。
マルは決してロマンチストではないけれど、ベターハーフって本当にあったんだ、と思った。
パズルでいうと、彼女たちは、隣り合うピース。一度ぴたっとくっつけると、二度と離れることはない、そんな関係に思えた。
それが別れたい、というのだ。別れさせ屋への依頼も検討しているという。男女関係とは本当に難しい。
幸せの期間
そのきっかけは、私が思わずそんなこと?と聞き返すぐらい些細なものだった。
些細過ぎて電話をしている途中でそれがなんだったか忘れてしまったくらいだ。
それは例えば、いま片手で作っている野菜炒めを食べ終えた後に、たまねぎをいれてなかったことに気がついて、でもまあいっか、おいしかったし、って思うぐらい些細なことだった。
いつも冷蔵庫に入れてあった納豆がなくなっていて、まあ今日は我慢するか、っていうぐらいの些細なことだった。
だからきっとそれが原因ではないのだろう。
原因は恐らくもっと本質的なものだ。
もう少し頭を冷やして考えてみれば、というと彼女も少し冷静になった。
電話を切ったときには、すでに片手で晩御飯の後片付けを終えたあとだった。
私にとって彼女たちは理想の夫婦だった。幸せの象徴だった。
だから私のためにもなんとかしてこの壁を乗り越えて欲しいと思った。