「愛してる」のゆくえ

さっきまでは、こんなこと、想像もしてなかった。
私は掃除をしていただけだった。ふと思い立っていつもはしない夫の書斎を片付けようと思った。部屋に入り、モップで本をたたいて、机を片付けて、なんとなく引き出しを開けた。
そこには、私でない誰かの、夫への「愛してる」が山のように詰まってた。

K美が私のところへ電話をしてきたのは、真夜中。深夜2時近く。たまたま起きてた私が電話に出ると、K美はすでに泣いていた。
なんとか話をきくと、それは特定の女性がK美の夫へ送ったものらしかった。彼女はそれをばらばらに引きちぎり、家中にまいた後だった。そろそろ、いつも忙しいという夫が帰ってくる、浮気してる、K美はそういって泣いていた。もうこの状態では夫が何をいっても冷静には聞けないだろう。その日は、K美をうちに呼び、旦那さんからの連絡を待った。
翌日、旦那さんからK美の携帯電話に電話が。とりあえず私が出た。「誤解なんです!!」旦那さんは開口一番そう叫んだ。
話をきくと、それはK美と結婚する前に、ずっとつきあっていた女性からもらったものだという。真剣に結婚も考えていた。だが、その女性はほかの男性と結婚した。裏切られたと思ったが、それでも愛していた。そんな苦しい中、出会ったのがK美だったという。
はあ、そうですか、とK美を見た。顔は昨日から泣きっぱなしでぐちゃぐちゃ。私はK美に携帯電話を渡し、帰れと命じた。あとは2人の問題だ。
どのようにして離婚を回避するのだろうか。
2人のあいだでどんな話し合いが行われたか私は知らない。しかし2人がまだ、「夫婦」であることだけは事実だ。