お試しケンカ
マルの携帯に友人から電話があった。深夜12時だ。
ちょうどフレンチのメインディッシュが終わり、さあデザートを食べようと運ばれてきた夢の山場だった。
着信の表示を確認すると友人のSOSだと悟った。
出ようかほんの一瞬迷ったけど出るまで鳴らすに違いないと思ったから出た。
予想は的中。昨日今日結婚したような新婚ホヤホヤの彼女だった。
電話の向こうではかなりお酒に酔っている様子。確かにシラフでこんな夜中に電話はかけられないよね。
30分後ようやく内容が理解できた。おかげですっかり目が冴えてしまったけど。
要するに旦那さんが出張が多くてさみしいから離婚したいということだった。
しかも旦那は忙しいせいか出張先での電話もすぐ切ってしまうらしい。
しょうもない話なんだけど、彼女がこのまま変になっちゃう方が心配だ。
だんだん彼女も話しているうちに酔いも覚めてきたようだ。
結婚前より仕事多忙な彼は何も話してくれなくなったのが離婚したい理由。
聞いてる限りでは彼女のただのわがままにしか聞こえない。
「じゃあ、ほんとに別れたい方がいいのか試しにケンカしたつもりで家出してみれば?」こっちもなんだか疲れてきた。
早く夢枕に戻ってデザートの続きを見たい。
翌日、彼女の家のインターホンを鳴らしたけど家にいない。どうしたのかと思って携帯に電話したらすぐそばで鳴った。
「離婚届、取ってきちゃった。」彼女はそう言って楽しそうに笑っていた。
結婚と離婚ってそんな簡単なものなのかと不思議な気持ちで見ていた。
離婚届は懐刀として取ってきたようだ。
どうやら昨日マルが提案した離婚前の無期限のお試しケンカを本当に一人で始めたらしい。
彼女はマルが軽く思っていた以上に本気なんだとわかった。今は彼女の気持ちを優先して離婚前のお試し
ケンカに付き合う予定だ。