専業主婦の自己表現

「ねえ、人の「創造性」ってどこにでるのかなあ?」
いつもよりずいぶん派手だねえ、私はS美の言葉を無視して聞いた。 S美はいままでのジーンズにTシャツ姿とは一変して、巻いた髪に濃い目の化粧、薄い青のミニのワンピースを着ていた。
「これは旦那が・・・俺が食わせてるんだから俺の好みに合わせろって・・・。」
S美は新婚である。私は少し考え、3手先をよんで頭の中の「飛車」を動かしS美の「金」をにらんだ。
「どうせやるんでしょ?」
私は机の上のデッサンをみていたが、S美が顔を上げてこっちをみたのがわかった。またうつむいた。
「旦那はやめろっていったけど、自分の携帯が欲しくて・・・」
買ったわけだ。これで1手。S美は行動力のある人間だ。
「携帯代を払わなくちゃいけないから、仕事を探して・・・」
はじめた、と。これで2手。
「旦那はもうカンカンに怒ってて、結婚前と話が違うって。詐欺だって。離婚するって。」
で、逃げてきたんだ、S美がまた顔を上げた。こわいこわい。私は「王将」に「歩」をはった。
「結婚することが夢だった。結婚すればすべてうまくいくと思っていた。自己実現できると思っていた。だが違った。だから逃げてきた。」
私は淡々と言った。S美はなにかを考えていた。
「図書館、の受付の仕事をしたいの」
ほら、これで3手。
それは図書館司書、大学で単位をとるとなれるよ、通信制大学、探してみたら?また私は淡々と言った。
しばらく考え、うん、と言ったS美は満面の笑顔を浮かべていた。