いとしき歳月

自分をしるもの

「マルはあいかわらずだねえ。人の話に否定も肯定もしない。昔はそれを冷たいと思っていたよ。でもいまは、それがむずかしいって思うんだよ。」
ききながら、私は自分のロイヤルミルクティーを一口飲んだ。
M美とは15年ぶりの再会だった。
幸せ?私がきくと、うん、たぶん、M美の顔は少し曇った。

M美は爆裂もてる女の子だった。もてすぎて誘拐されたことがあるくらいだ。しかし、男運は爆裂なかった。
家族の6人の生活費を一人で稼いでいた。まだ、高校生だったのに。

最後に会ったとき、というか電話したとき、M美は自殺を図るところだった。
私にある薬の致死量をきいてきたのだ。最後にと。
その声が、あまりにもおだやかで、それまで聞いたことがないくらい幸せそうな声で、私は致死量を教えた。先に行ってる、M美はそういって電話を切った。

「幸せ」の定義

なんで?幸せじゃないの?過去には触れず、私は聞いた。
旦那が浮気してるから、こともなげにM美はいった。
「でもそんなことはたいしたことじゃないの。子供もいるし、生活できてるから。だから、今は、たぶん、幸せなの。」
M美はおだやかに言った。

たしかに、昔のことを考えたらいまのM美は幸せなんだろう。夫の浮気くらい、彼女にはなんでもないことなのだ。

もっと幸せになろうとは思わないの?私がきくと、M美は笑った。
「いつも質問ばっかり。たまには質問させてよ」
いいよ、なんでもききなよ、口をとがらせて私がいうと、M美はまた楽しそうに笑った。